東大臨床心理合格体験記
東京大学教育学研究科臨床心理学コースの合格体験記です.
2019年度の試験について書いています.
実は3年前に別のブログで公開していたものなのですが,諸事情により1年ほど公開を停止していました.多少手直しをしつつ基本的には転記という形で再度公開します.
院試は基本的に情報が少なく,私は外部からの受験だったということもあり,当時とても困った記憶があります.このブログを公開することで,誰かの,特に東大の外部や,異分野からの合格を目指す方々のお役に立てることができたら幸いです.
1.経歴
大学4年までの専攻は心理ではありませんでした.したがって,本当に知識0からの受験でした.
東京大学以外の学校を併願するつもりがなかったため,予備校には行かず,東大対策だけに絞って独学で勉強していました.
2.いつから勉強を始めるか
東京大学の場合,試験が9月中旬,願書提出が6月末(H31の場合)です.
願書提出の際に必要とされている書類に研究計画書が含まれており,私はこの研究計画書の作成に結構時間がかかりました.研究計画書というものを書いたことがない,という人であれば,研究計画書の作成には3ヶ月は見ておくと良いと思います.
したがって,1年前から初めれば超安心,遅くとも年の始めには対策をスタートしておきましょう,という感じになるかと思います.
私が最初立てていたスケジュールとしては,
前年9月〜1月:基本的な心理学の知識や単語の学習
2〜4月:研究計画書の作成を同時並行で進める
4月〜受験日:過去問対策
だったのですが,結果的には
前年9月〜2月:基本的な心理学の知識や単語の学習
3月〜6月:研究計画書,卒業論文計画書の作成
7月〜受験日:過去問対策
という形になってしまいました.
3.研究計画書を書こう
まず,ciniiやGoogleScholarなどで自分が研究したい分野の先行研究を探して読みます.そして,論文の参考文献から芋づる式に論文を探し出してひたすら読み続けます.50本ぐらい読めば大枠が掴めると思います.
その後,書き始める前に,私は以下の2冊をざっと読んだ気がします.本当に何もわからない状態だったのが多少マシになりました.
公認心理師・臨床心理士大学院対策 鉄則10&サンプル18 研究計画書編 (KS専門書)
- 作者: 渋谷寛子,宮川純,河合塾KALS
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これを読んだ後は,書く→添削してもらう→書く の繰り返しで洗練させていけばいいと思います.本当に,絶対添削してもらうべきです.
私はいろいろあって2回研究計画書を書いたんですが,1度目は1月〜3月末の3ヶ月,2度目は5月末〜6月末までの1ヶ月という時間がかかりました.2回目でなぜこんなに早く書けたかというと,添削してくださる先輩と繋がることができたからです...研究計画書を書く際には,絶対に添削に協力してくれる人を探すべきです.
面接官(教授達)が研究計画書を通して見ているのは,論理的な文章を書く力と,大学院との相性(そこで研究できそうな内容か),ではないかなと思います.
面接で「なぜこの研究がしたいのですか?」と質問されたときにスラスラと答えられるよう,そもそもなぜその分野・その疾患・その研究に関心があるのかという考えをきちんと持っておくと良いでしょう.
4.英語はコツコツしよう
英語の問題は,教育学研究科共通の問題です.人文科学系の内容のだいたい200words前後の文章が3題あり,そのうちの2題を選んで90分(もしかしたら2時間だったかも,忘れました)で和訳するものです.問題は和訳のみです.
大体英検1級レベルの単語が出たような気がします.
私は院単を一冊暗記しました.
あと,TOEFL対策の本をなにかしら持ってる人は、その本の中で人文系の単語を重点的に覚えるのも良いと思います.
個人的には,以下の本がおすすめです.
速読英単語のアカデミック版,といえば伝わるでしょうか.最初に見開きで文章が書いてあり,その文章に出てきた単語を覚える,というような英単語本です.
アカデミック版ということもあり,各学問分野の基本的なトピックと単語をざっと学ぶことができます.日本語で詳しい解説も書いてあり,単純に読み物としても面白いです(私は大学院在学中にTOEFL対策として理系バージョンも買って読みました.面白かったです).
テーマ別英単語 ACADEMIC [中級] 01人文・社会科学編
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心理院単なるものが売っていますが,私はあまりおすすめしません.なぜなら,教育学研究科共通の問題なので,試験問題では心理系の専門用語がそこまで出て来ないからです.そういった点からも,やはり上記のテーマ別英単語はおすすめです.和文英訳の練習もできます.
和訳の練習はこれで間に合うと思います(ちなみにわたしは時間が取れずほぼできませんでした).
私は英語の過去問は直前1ヶ月に取っておいて,それまでは,実際の問題と同じような長さの他の人文系の英文を時間内に全訳する練習をしていました,毎日1題ずつぐらいです.
5.専門科目−心理編−
問題構成から見るに,専門の問題はおそらく臨床心理コースの教授がそれぞれ1問ずつ作っておられると思います.したがって、上記の本は絶対に読んでおくべきです.ほぼここから出ます.
上記の本を読んで,重要単語はもちろん,背景となっている考え方を頭に入れて,論述できるようにしておくべきです.
しかし,上記には高橋先生と滝沢先生と野中先生の著作は含まれていません.したがって,高橋先生が作成される問題の対策のために,企業におけるメンタルヘルス・産業心理学を学んでおくこと,滝沢先生の場合は,バイオマーカーを用いる研究や精神医学との関連などを抑えておくこと(先生の研究室のサイトに行って先生がどのような研究をされている/目指しておられるかをチェックすること),野中先生の場合は,精神疾患や各発達障害の特徴,介入方法,介入における留意点などを抑えておくことが必要だと思います.
わたしの場合,過去問を10年分持っていましたので,上記の参考図書を参照しながら10年分全ての問題の模範解答を作成し,過去問を参考にした自作の類似問題とその回答をさらに20年分程度制作しました.
本当はそれを更に暗記したかったのですが,時間がなく暗記には一切時間を割くことができませんでした.
したがって,本当に落ちると思ったのですが,一応受かったので,参考図書を何度もめくりながら例題を作ったり解答を考えたりする行為が実は良い勉強になっていたのだと思います.
過去問は東京大学から取り寄せることができます.
「東京大学 大学院 過去問」などと検索してみてください(リンク貼らずにすみません)
6.専門科目―統計編−
私が受験したときは,南風原先生が問題を作成されていました.現在は岡田先生が作成されているのかな・・・?
わたしはまずこの本
よくわかる心理統計 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)
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を冬休みの間に読みました.サラッと読んで雰囲気を掴むだけです.
その後,春ごろから(これは理想で,私が始めたのは8月からでした.8月からでは絶対に遅いと思います,本当に絶望してました).
臨床心理学をまなぶシリーズの『量的研究法』と『心理統計学の基礎』を読みながら,過去問を解きつつ,例題を作りつつ,例題の解答を作りつつ,暗記する,という方法を取りました.
また,上記の南風原先生の『心理統計学の基礎』と完全対応しているワークブックもあります.
計算問題が多く,少し難易度高いです.
当初はこれを何周かする予定でしたが,私は計画が後ろ倒しになっていたので,この本に取り組むのを諦め,単語の暗記で闘いました(実際,2019年以前には過去に計算問題が出題された試しがないので,個人的には,計算の演習は超重要,とまではいかないと思います,あくまでも概念を理解するのが先でしょう)(2020年以降の問題についてはわかりかねますが・・・)
ちなみに,東大院生のアシリスさんのブログでは
理解するには,最低3周。自分のものにするには7周以上した方が良いでしょう。
この7周というのは,内部生も苦戦し,平均すると7周くらい繰り返していたことから出た数字です。
と書かれています.わたしの知り合いの先輩もこのワークブックを使ったといっておられました.したがって,このワークブックはやって損することは絶対に無いですし,時間が許すのならば解いておいて損はないかな,と思います.
『続・心理統計学の基礎』というのもあるのですが,ここまでの問題は出ないので読まなくても大丈夫だと思います.
続・心理統計学の基礎--統合的理解を広げ深める (有斐閣アルマ)
- 作者: 南風原朝和
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